A・ワイダ最新作『ワレサ 連帯の男』

ポーランドの映画監督、アンジェイ・ワイダの新作『ワレサ 連帯の男』が日本全国で公開中だ。ソ連による共産主義支配の下、労働組合「連帯」を率いてポーランドの民主化を実現したレフ・ワレサ。一介の電気技師だった彼が、いかにして反体制の旗を掲げ、民衆の心を掴んでいったのか。彼の激動の半生を、家族との日々を通じて描く。

ポーランドの湾岸の街、グダンスク。造船所の電気工として働くワレサは、まもなく出産をむかえる妻のダヌタとともに静かに暮らしていた。しかし、物価の高騰に反対するデモの混乱の中で、彼は公安局に拘束されてしまう。

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その一件以降、度重なる政府からの監視や勾留にあう中で、ワレサは徐々に労働者たちのリーダーとしての自覚に目覚めていく。そして1980年、ワレサは仲間に請われるままにグダンスク造船所でのストライキを指揮。このストライキは他の労働者たちの連鎖を生み、次第にポーランド全体へと広がっていった。

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1980年に自由労働組合「連帯」を組織したワレサは、急速に世界からの注目を集めるようになる。民主化運動に没頭する彼をひたすら信じ、政府から幼い息子たちを守り続けたのは妻のダヌタだった。彼女の存在が、民衆からの大きな期待を背負うワレサの唯一の心の拠り所となっていた。

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ワレサ率いる「連帯」は、ついにグダンスクのストライキに勝利。ポーランドは一気に民主化へと向かってゆく。さらに、他の東欧国家もこの動きに呼応するように民主化へとへと雪崩れ込んでいき、やがてソ連の崩壊という歴史の大きな転換点に繋がっていくことになる。

単なる伝記映画には終わらず、労働者たちの叫びを代弁するかのように鳴り響くロックミュージックや、緊迫感あふれる当時のドキュメンタリー映像などが挿入され、歴史の大きなうねりの中にあったポーランドの世情が、映画というエンターテインメントの中に巧みに演出されている。

本作を撮り上げたワイダは御年88歳。彼自身も第二次世界大戦ではレジスタンス運動に協力した過去があり、『灰とダイヤモンド』、『大理石の男』、『鉄の男』などの代表作には、ポーランドの政治的背景が色濃く反映されている。彼がポーランドの民主化を成し遂げたワレサを題材として選んだのは必然かもしれない。

折しも2014年は、戦後初の自由選挙が行われてから25周年、さらにEU加盟から10周年という記念の年。この作品によって、ポーランドの人々が様々な歴史に翻弄されながらも、自らの手で現代の形を作り上げてきた歴史を知ることで、現代のポーランドへの理解をさらに深めることができるはずだ。

text:katsuhiro takayanagi(TOKYO)

ワレサ 連帯の男』 
<STAFF>
監督:アンジェイ・ワイダ
脚本:ヤヌシュ・グウォヴァツキ
<CAST>
ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホフスカほか
2013年/ポーランド映画/ポーランド語・イタリア語/シネマスコープ/デジタル5.1ch/127分/字幕翻訳:久山宏一、吉川美奈子 
提供:ニューセレクト/NHKエンタープライズ 
配給:アルバトロス・フィルム 
公開:4月5日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショー 
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