ポーランドでは、3月からのロックダウンを経て、6月から規制が緩和されましたが、夏のバカンス後の影響もあり9月からは感染者が再び緩やかに増加してきているため、地域によっては見本市や会議なども禁止されている地域もあります。現時点でのワルシャワは強化制限地域には入っていませんが、引き続きマスク着用や手洗いなどの感染予防と、ソーシャル・ディスタンスの確保が推奨されています。
新型コロナによる影響はポーランドの現代アートギャラリーにおいても大きな打撃を与えました。欧州各国ではアーティストや現代アートギャラリー向けのさまざまな支援プログラムが開始されていますが、現状のワルシャワでは、わずかな家賃の値下げを期待できるのみ。WGWに毎年参加しているギャラリーで集計されたデータによると、今年の1月、2月に比べ、3月、4月はロックダウンによりギャラリーが強制的に閉鎖されたため売上高は80%減少しました。ギャラリーオーナーはこの不安定で苦しい状況に憂いを更に強めているのが現状です。
ポーランドでは、ほかのヨーロッパ諸国とは異なり、ポーランド芸術の国際的なプロモーションをサポートする体系的な解決策が少ないといわれています。コロナ禍で進む景気後退の影響を懸念して、WGWは、アートギャラリーの存続と作家の環境をサポートするための取り組みやプログラムを進めています。そのひとつとして、10月1日から開催されている「ワルシャワ ギャラリー ウィークエンド 2020 (WGW)」のギャラリー参加料金はポーランドの文化省とワルシャワ市の支援により全額免除となりました。
アートギャラリーは、日常的にアーティストと協力しながら、新作の制作や展示会、アートフェアへの参加、そして世界中のギャラリーと交流しながらアーティストの創造性を促進し、都市における芸術的生活を活気づけます。今年、この世界的なパンデミックの影響で多くの国際的なアートフェアは中止または延期となりました。ポーランドの現代アートギャラリーの主要な売上の大部分は海外からになるため、かなり大きなダメージをうけました。そして、ギャラリーの売上高の低下は、そのままアーティストの経済状況の悪化につながりることになります。
ポーランドでも様々な分野でオンライン化が加速しています。Bロックダウン中にはワルシャワ近代美術館もいち早くオンライン展示会を開催したり、ギャラリーでも作家との対話やワークショップ、アートツアーのオンライン化がみられました。また、在宅期間が長くなるのにつれて、アートを購入するひとも増えてきているもの事実です。もちろん、ふらりとギャラリーに足を運び、作品と空間そのものに触れる喜びはオンラインでは味わえないものだけれど、新しい生活様式をうけ、アートの新しい出会い方や楽しみ方の提案するギャラリーもでてきそうです。
熟考から直感へ、物質的な豊かさから、精神的な豊かさを求める世界に変わろうとしているなか、アートの価値は今後ますます高まっていくのではないかと思われます。