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名作から新作まで、ポーランド映画を堪能する2週間「ポーランド映画祭2018」開催!

7年目を迎えるポーランド映画祭。今年は11月10日(土)から2週間に渡り東京都写真美術館ホールで開催される。ポーランド独立回復100 周年を記念したプログラムや、国内外で活躍するポーランドの女性監督の特集、日本初公開を含む最新のポーランド映画や、ロマン・ポランスキー監督の85歳を記念した上映するなど今年も豊富なラインナップになっている。

top photo:『水の中のナイフ』©2013 Euro London Films, Ltd. All Rights Reserved.

ポーランド映画の最前線

ポーランド本国でも話題となった最新作を紹介する《ポーリッシュ・シネマ・ナウ!》では”キュリー夫人”の波乱万丈の人生を映画化したやポーランドのアカデミー賞ともいわれる、ポーランド映画賞で作品賞、主演男優賞などを受賞した話題作『クリスマスの夜に』(ピオトル・ドマレフスキ監督/2017)などが日本初公開。来年2019年に日本公開が決定している『メモリーズ・オブ・サマー』(アダム・グジンスキ監督/2016)は、12歳の少年が大人への階段をのぼる思春期の過程での一瞬の季節を瑞々しいタッチで描いた傑作。

『ラブ・エクスプレス ヴァレリアン・ボロフチクについて』(クバ・ミクルダ監督/2018年)©2018 CoLab Pictures - HBO Europe s.r.o. - Insytut Adama Mickiewicza - Maagiline Masin - Otter Films

『ラブ・エクスプレス ヴァレリアン・ボロフチクについて』(クバ・ミクルダ監督/2018年)©2018 CoLab Pictures – HBO Europe s.r.o. – Insytut Adama Mickiewicza – Maagiline Masin – Otter Films

 今年ポーランド国内で公開されたばかりの『ラブ・エクスプレス ヴァレリアン・ボロフチクについて』(クバ・ミクルダ監督/2018年)も日本初公開される。20世紀の最も破綻したポーランド人アーティストの一人ともいわれる、ポーランド映画監督ヴァレリアン・ボロフチク監督(1923年ー2006年)のドキュメンタリー映画。ワルシャワでポスターデザインや実験的な短編映画を手がけた後、パリへ移住、アニメーションの世界で国際的な成功を得た後はポルノグラフィーの美学を追求し、エロティック映画を制作し続けた。

名作映画から見るポーランド史

『夜と昼』(イエジー・アントチャック監督/1975)©Studio Filmowe KADR

『夜と昼』(イエジー・アントチャック監督/1975)©Studio Filmowe KADR


 第一次世界大戦後の1918年11月11日、ポーランドは近隣諸国による支配から独立を回復して今年で100周年。歴史に翻弄されながらも、不屈の国ともいわれるポーランドの歴史を名作映画7作品でより深めてみたい。注目は日本初公開となる『夜と昼』(イエジー・アントチャック監督/1975)。歴史に翻弄された家族を通しながら第一次世界大戦の始まりから終わりまでの50年間を壮大なスケールで描いている。

『ヴォウィン 』(ヴォイチェフ・スマジョフスキ監督/2016)

『ヴォウィン 』(ヴォイチェフ・スマジョフスキ監督/2016)

日本初公開となる『ヴォウィン 』(ヴォイチェフ・スマジョフスキ監督/2016)。ウクライナ人、ポーランド人、ロシア人、ユダヤ人が共生していた地域ヴィウィン(現在はウクライナに位置する)で起こった民族相互の大虐殺は第二次世界大戦の最大の悲劇とも言われた。現在世界でも民族主義へと傾むいていくなかで改めて疑問を投げかける問題作となっている。またポーランド映画を代表する傑作『灰とダイヤモンド』(アンジェイ・ワイダ監督/1958年)や世界中で絶賛を浴びた『戦場のピアニスト』(ロマン・ポランスキー監督/2002)といった名作もデジタル・リマスター版で上映される。

ポーランドの女性監督たち

 昨年、今年とベルリン国際映画祭でポーランド人女性監督たちが銀熊賞を連続受賞するなど国内外で評価をよぶ女性監督作品を特集。日本初公開となるのは、短編を含む4作品。『顔』(マウゴジャタ・シュモフスカ監督/2017)は第68回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞した、アイデンティティの喪失を激しい音楽とともに描いた意欲作。

『ポコットー動物たちの復讐』(アグニェシュカ・ホランドと娘のカシャ・アダミックの共同監督作/2017)©Robert Palka/Studio FIlmowe Tor

『ポコットー動物たちの復讐』(アグニェシュカ・ホランドと娘のカシャ・アダミックの共同監督作/2017)©Robert Palka/Studio FIlmowe Tor

『ポコットー動物たちの復讐』は昨年銀熊賞を受賞したアグニェシュカ・ホランドと娘のカシャ・アダミックの共同監督作。小さな村での連続殺人事件、野生動物、狩人…ポーランドの女流作家オルガ・トカルチュクの小説が原作となる本作は国内外からの評価が高いにもかかわらずポーランド国内の右派団体から反キリスト要素があると抗議をうけた問題作。

11月14日(水)19:00と、11月17日(土)17:15にはポーランドの若手女性監督の3つの短篇作品が3作品同時上映される。

また11月はポーランド文化を身近に感じられるフェアが都内各所で開催中。音楽イベント<ポーランド音楽を知る会>やポーランド・ブックフェア等ぜひこの時期をお見逃しなく。ポーランド映画祭2018の予告映像はこちらから

 :ポーランド映画祭2018
監修/イエジー・スコリモフスキ監督
会期:2018年11月10日(土)から11月23日(金・祝)
会場:東京都写真美術館ホール
(11月12日(月)、11月19日(月)は休館のため上映なし)
当日料金:一般 ¥1,500 /シニア ¥1,100、
大学・高校・中学生以下・障がい者手帳をお持ちの方 ¥1,000

http://www.polandfilmfes.com/


©2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』:ワルシャワ動物園の知られざる実話

人間は危機に瀕したときほど品性が見えるものだ。自らの命の危険を顧みず、他人の命を救おうとする行為はとりわけ廉潔で称賛に値する。ポーランドに関わる人物では、オスカー・シンドラーや杉原千畝が思い浮かぶ。 続きを読む


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名作から新作まで。今年も注目作が勢ぞろい「ポーランド映画祭2017」開催!

6年目を迎えるポーランド映画祭。今年は開催場所が東京都写真美術館ホールになり、巨匠たちの傑作から若手作家の最新作まで映画祭史上最大の作品数となり魅力的なラインナップが揃っています。 続きを読む


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追悼アンジェイ・ワイダ監督特集「ポーランド映画祭2016」開催!

先月、10月9日、“ポーランド映画の父”と呼ばれるアンジェイ・ワイダ監督の訃報が伝えられポーランド映画界のみならず、世界各国で深い悲しみにつつまれました。5年目を迎える「ポーランド映画祭2016」では急遽プログラムを変更、開催期間も1週間延長し、《追悼アンジェイ・ワイダ監督特集》としてアンジェイ・ワイダ監督の代表作10作品の上映と、監督の影響を受けて育った若手監督の最新作のあわせて17作品が上映されます。 続きを読む


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Interview:『イレブン・ミニッツ』イエジー・スコリモフスキ(Jerzy Skolimowski)監督

役を得るためにセクハラまがいの監督に会いに行く女優と、彼女を引き留める嫉妬深い夫。若い娘を相手に問題を起こし、刑務所から出所したばかりの父親と、結婚間近の薬物中毒の息子。質屋強盗をもくろみ、失敗した少年。川沿いで絵を描く老人。その多くが空に目撃した、謎の黒い点の正体は……。 続きを読む


© 2015 Laokoon Filmgroup

『サウルの息子』:決して逃げられないアウシュヴィッツの狂気

ナチスドイツの収容所には、囚人によって構成される「ゾンダーコマンド」という特殊任務の部隊があった。他の囚人と引き離され、限られた範囲内での行動の自由も許されていた彼らの役目は、移送されてきたユダヤ人たちを安心してガス室に送り込むこと。 続きを読む


わたしたちの呪縛 ©WARSAW FILM SCHOOL

11月はポーランドの月、「ポーランド映画祭2015」も開催!

今年は『イーダ』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、ポーランド映画史上初の快挙を成し遂げたのは記憶に新しいところ。数々の名作を生み出してきたアンジェイ・ワイダや、イエジー・スコリモフスキ、ロマン・ポランスキーだけでなく、いま多くの若手作家が勢いづいているポーランド映画界。 続きを読む


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『イマジン』:目をつむり耳をすませば、見えてくる別の世界

映画の最初は、闇の中にぼやーっと白いものが見えるだけ。聞こえるのは小鳥の声と犬の荒い息。近くに道路では車が行き交う音もする。やがてピントが合ってくる。そこは白い壁に囲まれた中庭で、黒いドアの隙間に犬が鼻を突っ込んでくんくん嗅いでいる。現れた管理人がドアを開けると、サングラスをかけた若い男。「ノックをすればいいのに」と言われると、彼は盲目なのに「誰もいなかったから」と少し得意げに言う。この物語の主人公・イアンである。

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Interview :『パプーシャの黒い瞳』ヨアンナ・コス=クラウゼ(Joanna Kos-Krauze)監督

書き文字を持たないジプシー社会に生まれ、詩を書くことですべてを失ったパプーシャ。ポーランドで知られるジプシーとして初の女性詩人の波乱の生涯を描いた『パプーシャの黒い瞳』が描く、激動の時代の中で翻弄され、失われていったジプシー文化とは?

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