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Museum on the Vistula /   © Z POLSKI 2017

ワルシャワのシンボル<人魚(Syrena)>に出会う春

ワルシャワ市の紋章にもみることができる<人魚(Syrena)>は、街のシンボル。ヴィスワ川の人魚伝説しかり、昔から市民を守ってくれていると言われ、ワルシャワでは特別な存在。そのワルシャワにおける<人魚(Syrena)>との普遍的な関係性を深く掘り下げた「Syrena herbem twym zwodniczą / Beguiling Siren is Thy Crest」が開催されている。(6月18日まで)

Museum on the Vistula

古い車のインスタレーションは、1957年から80年代後半まで生産されていたポーランドの国産車であるSyrena(ワルシャワのシンボル人魚(Syrena)と同じ名前)を用いたもの。Jerzy Bohdan Szumczyk / The Warsaw Mermaid

会場は、2017年3月25日にオープンした新しいスペース<ヴィスワ川の美術館(Museum on the Vistula)>。ヴィスワ川のほとりに、浮かび上がるまるで白い箱のような建物は、オーストリアの建築家アドルフ・クリシャニッツ(Adolf Krischanitz )によって設計された。ウィーンのティッセン・ボルネミッサ現代美術財団(Thyssen- Bornemisza Art Contemporary–Augarten)から一時的に貸し出されたもの。美術館にはブックストアとカフェやテラスも併設され、またひとつワルシャワに素敵な空間が誕生した。

中央にある彫刻は、ベルリン在住でデンマークとノルウェー出身のアーティストデュオ、ELMGREEN & DRAGSETによる<He (Cooper Green) 2013, Sculpture>。

オープニングを飾るのにふさわしいこの展覧会のタイトルは、ポーランドの偉大な叙情詩人のひとり、ツィプリアン・カミル・ノルヴィッド(Cyprian Kamil Norwid 1821-1883)の詩”Dedication”から引用されたもの。ワルシャワ出身のノルヴィッドは、そのほとんどを異国で暮らし、孤独のなかパリで病死したといわれているが、故郷ワルシャワは彼のYouth(青春)の象徴だったのだろう。(アンジェイ・ワイダ監督の映画『灰とダイアモンド』のタイトルも、ノルヴィッドの詩から引用されている)美しく、せつない人魚姫の物語ともかけあって、詩的な世界観が会場を包み込む。

左は、ポーランドの画家Ewa Juszkiewicz による<Untitled (after René Magritte “The Collective Invention”) 2017 / oil on canvas>。ベルギーのシュールレアリスムの画家マグリットによる人魚は、下半身が人間で上半身が魚になっているが、この単純な変化によってさらに不可解な世界へわたしたちを導く。

ともあれ、2面性を持つといわれる人魚。その美しさとグロテスクな狭間で、”人魚”と”人”との間で揺れ動く。まるで水の底にいるような、あやふやな世界観のなかで、あなた自身の人魚に出会えるかもしれない。会場には、世界各国から50以上のアーティストの作品が展示されるほか、会期中には随時ワークショップやイベントも開催される。また、公式サイトにアクセスすると、全作品をみることができ、タップすると詳細がみれるようなインタラクティブなつくりになっているのでぜひアクセスしてみて。詳細はこちら

 Museum on the Vistula
「Syrena herbem twym zwodniczą / Beguiling Siren is Thy Crest」
開催期間:2017年3月25日ー6月18日
所在地:ul. Wybrzeże Kościuszkowskie 22, 00-390 Warsaw, Poland営業時間:火曜ー木曜日 12:00 – 20:00 / 金曜12:00 – 22:00 /土曜  11:00 – 20:00 /日曜  11:00 – 18:00

定休日:月曜日 
入場料:無料

 参加アーティスト:
Korakrit Arunanondchai, Evelyne Axell, Alex Baczyński, Zdzisław Beksiński, Louise Bourgeois, Eugène Brands, Agnieszka Brzeżańska, Bernard Buffet, Claude Cahun, Liz Craft, Edith Dekyndt, Christian Dietrich, Leo Dohmen, Drexcyia i Abdul Qadim Haqq, Elmgreen & Dragset, Leonor Fini, Ellen Gallagher, Malarz Goltyr, Justyna Górowska, Zdzisław Jasiński, Dorota Jurczak, Ewa Juszkiewicz, Birgit Jürgenssen, Tobias Kaspar, Marek Kijewski, Aldona Kopkiewicz i Mateusz Kula, Łukasz Korolkiewicz, Gina Litherland, Jacek Malczewski, Witek Orski, Sylvia Palacios Whitman, Pablo Picasso, Krzysztof Pijarski, Aleka Polis, Agnieszka Polska, Karol Radziszewski, Joanna Rajkowska, Carol Rama, Erna Rosenstein, Tejal Shah, Franciszek Siedlecki, Tomasz Sikorski, Penny Slinger, Juliana Snapper, Franz von Stuck, project „Warsaw’s Sirens” (Jacek Łagowski, Danuta Matloch, Katarzyna Opara), Alina Szapocznikow, Stanisław Szukalski, Jerzy Bohdan Szumczyk, Wacław Szymanowski, Dorothea Tanning, Wolfgang Tillmans, Tunga, Anne Uddenberg, Aleksandra Waliszewska, Wojciech Wilczyk, Hannah Wilke, Ming Wong, Marcelo Zammenhoff, Anna Zaradny, Artur Żmijewski.

ワルシャワには3つの人魚像があり、<ヴィスワ川の美術館(Museum on the Vistula)>の隣、コペルニクス科学センターを通り過ぎた先の、シフィエントクシスキ橋のふもとにも大きな人魚像<Pomnik Syreny nad Wisłą> をみることができるので、こちらも訪れてみよう。


ewatop

失われたアートの復活ーエヴァ・ユシュケヴィッチ(Ewa Juszkiewicz)の新作

奇妙なマスクや歪んだ顔、19世紀の古典的な宮廷肖像画を再解釈し、一度みたら忘れられない独特の肖像画シリーズが記憶に新しい、エヴァ・ユシュケヴィッチ(Ewa Juszkiewicz)

ワルシャワのギャラリーlokal_30にて開催中のグループ展’”Gauguin’s Syndrome(ゴーギャン症候群)”では、エヴァ・ユシュケヴィッチの新しいシリーズーー戦争中に盗まれた、もしくは焼失され行方不明となった芸術作品のアーカイブ写真を基に描かれたーー作品をみることができる。

(写真左)Untitled, 2016 Oil on canvas/40 × 30 cm 高さ19cmのドリスデンのザクセン磁器の小さな像は、1872年以降に製作されたもの。1943年にパリもしくはアムステルダムにて消失。(写真右)Untitled (after Otto Freundlich),ポーランド出身の画家・彫刻家オットー・フロイントリッヒ(Otto Freundlich/1878-1943)は、ピカソやブラックとならびヨーロッパの非具象派芸術の先駆者でした。作品の大部分はナチスによって破壊され、1943年にポーランドの収容所で亡くなりました。

(写真左)Untitled, 2016 Oil on canvas/40 × 30 cm  高さ19cmのドリスデンのザクセン磁器の小さな像は、1872年以降に製作されたもの。1943年にパリもしくはアムステルダムにて消失。(写真右)Untitled (after Otto Freundlich),画家・彫刻家オットー・フロイントリッヒ(Otto Freundlich/1878-1943)は、ピカソやブラックとならびヨーロッパの抽象芸術の先駆者。作品の大部分はナチスによって退廃芸術とみなされ破壊され、さらにユダヤ人であったオットーは1943年にポーランドのマイダネク収容所で処刑される。

失われた作品は絵画だけでなく、オブジェや彫刻も含まれる、それらの画像は膨大な過去の写真アーカイブから、とくにエヴァ自身の個人的な経験と関連するものを選び、イメージを拾いだしながら”失われたアート”を再解釈。作品が失われた状況より、むしろ作品のもつオーラを復元することにフォーカスしたという。

戦前からポーランドの前衛芸術家として活動していたカタジナ・コボロ(Katarzyna Kobro1898 - 1950 )の彫刻Nude(4)をもとに描かれた。作品は1931-33の間に製作されているが、おそらく展示されたのは、1932-34の間のみで、ほかの彫刻作品とともに消失している。

戦前からポーランドの前衛芸術家として活動していたカタジナ・コボロ(Katarzyna Kobro1898 – 1950 )の彫刻”Nude(4)”をもとにして描かれた。コボロの彫刻は1931-33の間に製作されているが、おそらく展示されたのは、1932-34の間のみで、ほかの彫刻作品とともに消失している。

下の写真でみられるのはマックス・ペヒシュタイン(Max Pechstein, 1881-1955) の未だ行方不明となっている作品「ぶどうの収穫」をもとにして描かれたもの。

Untitled (after Max Pechstein), 2015 Oil on canvas/170 × 150 cm

Untitled (after Max Pechstein), 2015
Oil on canvas/170 × 150 cm

この作品の所有者は裕福なユダヤ人の靴メーカーだった、アルフレッド・ヘス(Alfred Hess 1879-1931)。ヘス家では4,000以上の現代美術コレクションがあり、ほとんどの作品はアーティスト自身から直接購入していました。1931年、アルフレッドの突然の病死と同時に、ナチス政権の締め付けが厳しくなります。美術コレクションの管理は、残された妻テクラと息子のハンスが引き継ぎますが、1933年、ベルリンにあるハンスの自宅はナチスにより略奪されます。その後、ハンスはパリ、ロンドンへと移住を余儀なくされ、母親のテクラは美術作品を守るためにドイツに残ります。

1933年、テクラは美術作品をスイスのバーゼル私立美術館に送ることでコレクションの大部分を保護することができました。当時のゲシュタポは現代美術を「退廃芸術」とみなし押収していました。1939年、ドイツ当局は、テクラに美術作品を海外から戻すよう脅し、作品のいくつかは不法に販売されドイツ外に密輸されます。テクラはケルンの美術連合を頼り、残りの美術作品とともにロンドンへ移住します。1947年に連合に連絡をとると、作品の貯蔵施設は爆撃され除去され、もしくは盗まれ、ほとんどが失われていました。テクラのお気に入りだったーーマックス・ペヒシュタインの「ぶどうの収穫」も未だ行方がわからないままーーとなっています。

喪失とその背後にあるストーリー、彼女自身の個人的な経験と重ね合わせて選んだ失われた作品。芸術のもつ普遍性、トーンの低い色彩のなかに隠された、激しさと美しさと静かな存在感。失ったものを復元するという行為は、ノスタルジックな忘却との闘いでもあり、破壊と創造の間にある緊張感が強く表現されている。展示は2016年11月23日まで。

FILIP BERENDT, EWA JUSZKIEWICZ, KATYA SHADKOVSKA Gauguin Syndrome 
2016年9月23日から11月23日まで
lokal_30
Wilcza 29a/12 (5th floor)
Warszawa

また、こちらの書籍『ポーランドの前衛美術 生き延びるための「応用ファンタジー」』は、日本で唯一の戦後のポーランドにおける前衛美術から21世紀の現代美術までを紹介する稀少な本。歴史に翻弄されながらも優れた作家を生み出したポーランド。丹念に考査されている本書は、前衛美術の軌跡をたどり、学びたいひとにもおすすめしたい保存版ともいえる。また、今回の展覧会でもこちらの本を読むことで、より一層深く面白く作品をみることができる。

polishavantgardeart

ポーランドの前衛美術     生き延びるための「応用ファンタジー」
著者: 加須屋明子
出版社: 創元社
定価: 3,672円 (税込)


 


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新アートマガジン、”Nichts Magazine” 51人のアーティストによる65のアートワーク全72ページ、オンラインで公開

ポーランド発の新しいアートマガジン”Nichts Magazin(ニッツ マガジン)”の第一弾がオンラインにて無料公開されました。ポーランドのアーティストを中心に、52人のアーティストが参加しています。


テキストはあえてアーティスト名と作品タイトルといったようにごくわずかな情報しか与えられません。発行者はアート、グラフィック、印刷業界を専門に活動する人々からなる謎めいた集団、Nichts Gruppe(ニッツ グルッペ)。任意の機関や政府の支援なしで、あくまでもアーティストと編集者による自由な創造に基づきながら制作され、作品に対する批評や経歴、概要などをあえて排除しています。

現在、印刷バージョンの制作を進めているなか、”Nichts Magazin #2”の発表もまもなくとのこと。まずは第一弾をご覧ください。前回のギャラリーにてご紹介したアガタ・クスの作品も掲載されています。

info:
nichtsma​​gazin.pl


agata-kus

アガタ・クス Agata Kus

Agata Kus   アガタ・クス:1987年、クロスノ生まれ。クラクフ在住。クラクフの美術アカデミーの絵画学科にて博士課程を卒業後、2010年から2014年までポーランドの現代美術家Paulina Ołowskaのプライベートスタジオにてアシスタントを務める。ペインティング、ドローイング、ビデオの分野で活動。2015年、ブロツワフの国際メディアアートビエンナーレにて最優秀賞を含めた数多くの賞を受賞。 続きを読む


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Tu czy tam? /ここで本を読む/ I Read Hear. 14人のポーランドの絵本アーティスト

前回の記事「8 places to see art in Warsaw・2016春」でも紹介したザヘンタ国立ギャラリーで開催中の「I Read Here. Contemporary Polish Illustration for Children」。絵本の世界のみならず、イラストレーターやグラフィックデザイナーとして活躍する14人のポーランド人アーティストがセレクトされ、今のポーランドにおけるイラストやグラフィックの世界を垣間みることもでき、子供から大人まで楽しめる企画になっています。 続きを読む


Salon nowej fotografii 2016

8 places to see art in Warsaw・2016春

イースターも終わり、ポーランドもやっと春の陽気になってきました。夏時間に切り替わり、この1週間ほどで午後7時くらいまで明るくなり、街歩きが楽しくなるこの季節におすすめの展示会をセレクトしました。旅をしたら、その土地のギャラリーや美術館にぜひ訪れてみて。アートにふれるだけでなく、その場所に行くまでの道のり、風景、そして建物や展示されている空間も楽しめます。初めて出会ったアーティストとの出会いがあなたの生活の特別なエッセンスになりますように。

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WGW2015

ワルシャワ ギャラリー ウィークエンド 2015

ポーランドの現代アートシーンを短期間で巡ることができるイベント、ワルシャワ ギャラリー ウィークエンド 2015 (Warsaw Gallery Weekend 2015) が今日からスタート。ワルシャワの主要なギャラリーが今年も20以上参加しています。様々な世代から特に注目するポーランド現代アーティストの展覧会やパフォーマンス、ワークショップ等が繰り広げられます。 続きを読む


cover photo / ©Anna Grzelewska, UNTITLED from series Julia Wannabe

EVENT:FOUND NEW POLSKA _ Z POLSKI WEEK END IN TOKYO #01

7月24日(金)、25日(土)、東京・富ヶ谷「HERBPARIS」にてポーランド発信アートイベント・ポップアップストアを期間限定で開催!

ポーランドの次世代デザイナー・アーティストが繰り広げるファンタスティックで魅力あふれる世界。ウキウキするハンドメイドのプロダクト、インスパイアされるグラフィックデザイン、写真・作品を展示。ほとんどのアーティストは日本では初めてとなるプレゼンテーションです。「Z POLSKI」がセレクトした様々な分野のアーティストたちをぜひご覧ください。

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Aneta Grzeszykowska, Selfie

10 Art Exhibitions in October

この秋ワルシャワでおすすめの10つの展覧会をご紹介。この時期ギャラリーや美術館では、新企画が目白押し。ポーランドの現代作家に触れられる機会です。セントラルを中心にギャラリーが点在し、地区によってはがらりと雰囲気が変わるワルシャワの街並みも巡りながら楽しんでみては。

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