アネタ・ヌトゥコ(Aneta Nytko) / UTOPIEC

ポーランド人写真家アネタ・ヌトゥコ(Aneta Nytko)の日本初個展「UTOPIEC」が、北九州のMAAAAAC SNC galleryではじまった。

「UTOPIEC(ウトピェツ)」は、魅惑と恐れ、美しさと闇、そのあいだにある曖昧な境界をテーマにしたプロジェクトである。着想源となっているのは、スラブ神話に登場する水の精霊「ウトピエツ」。ウトピエツは、美しい赤いリボンのような魅力的なものを使って若い女性たちを水辺へ誘い込み、水の底へと引き込む存在として語られている。

UTOPIEC/Aneta Nytko 2026

本作でアネタは、水面と深淵、その二つの世界の境界に立っている。光を反射し静かに輝く水面と、その下に広がる未知や不安。境界を越えていく行為は、危険を感じながらも、なお美しいものや強い欲望へ引き寄せられていく感覚のメタファーでもある。

UTOPIEC/Aneta Nytko 2026

この作品には、女性的な視点も強く感じられる。理性では危険だと分かっていながらも、抗えないほどに惹かれてしまう感覚。美しさと破壊、欲望と恐れは、互いに切り離されることなく、水面の揺らぎのように共存している。

UTOPIEC/Aneta Nytko 2026

作品の中で「水」は重要なモチーフとなっている。ポーランドの川や池だけでなく、ヨーロッパ各地で数年にわたって撮影が続けられてきた。写真によっては、水面が発光しているようにも見えるが、それは撮影時にホログラム状のフォイルを用いるなど、実験的な手法によるものだという。現実の風景でありながら、どこか夢や記憶の断片のような質感を生み出している。

UTOPIEC/Aneta Nytko 2026

神話的なイメージと個人的な感覚や記憶を重ね合わせながら、アネタは写真を通して、人が内側に抱える欲望や不安の輪郭を静かに浮かび上がらせる。

作家はオープニングにあわせて来日し、大阪からキャンピングカーで四国や別府など日本各地の自然を巡ったという。

アネタ・ヌトゥコは1975年生まれ、クラクフ在住。2019年より写真コレクティブ「ENOUGH PHOTOS」に参加している。身体、建築、風景に刻まれた記憶への関心を軸に、ドキュメンタリー写真と詩的なイメージを横断しながら作品制作を行っている。これまでに「TIFF Festival」やワルシャワの「Pod Kolor」などで展示を行い、2022年には「Learning to Fly」シリーズで Family Unposed Award 第一賞を受賞した。

展示は2026年6月15日まで。

「UTOPIEC」Aneta Nytko
会期:2026年5月16日〜6月15日
営業時間:11:00〜20:00
休廊日:毎週火曜、第2・第4月曜
入場無料
会場:MAAAAAC SNC gallery
〒802-0002 福岡県北九州市小倉北区京町4丁目3-10 尾崎繊維ビル2F